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東京高等裁判所 昭和61年(行コ)12号 判決 1986年7月17日

控訴人(原告) 伊藤芳治

被控訴人(被告) 地方公務員災害補償基金千葉県支部長

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

〔申立〕

控訴人は「原判決を取り消す。被控訴人が昭和五八年九月二日付けで控訴人に対して行つた療養補償請求書不受理決定処分のうち、昭和五四年七月一七日から昭和五六年三月三〇日までの療養補償請求に係る部分を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文第一項同旨の判決を求めた。

〔主張及び証拠関係〕

当事者双方の主張は、原判決事実摘示中「第二 当事者の主張」のとおりであり(但し、原判決二枚目裏一一行目の「受療した」を「療養に要した」と、三枚目裏二行目の「療養費用」を「療養に要した費用」と、六行目の「受療した」を「療養に要した」とそれぞれ改める。)、証拠の関係は原審記録中証拠目録記載のとおりであるから、これらを引用する。

理由

当裁判所も控訴人の本件請求は理由がないものと判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決理由説示と同一であるから、これを引用する。

一  原判決四枚目裏一、二行目の「甲第五、第八、第九及び第一一号証」を「甲第二号証、第五号証」と、四行目の「治療日ごとに」を「治療を受けた都度」と、六行目の「原告は、」を「遅くとも」とそれぞれ改め、六行目の「日ごとに」の次に「当該治療についての」を、七行目の「原告において」の次に「右療養費用の填補を目的とする被控訴人に対する」をそれぞれ加える。

二  同五枚目表三行目の冒頭から六枚目表五行目の末尾までを次のとおり改める。

「3 前掲各証拠に原本の存在及び成立に争いのない甲第八、第九号証、第一一号証、第一四号証を総合すれば、控訴人は、昭和五八年三月三〇日に、昭和五四年七月一七日から昭和五七年八月三一日までの間の各月分についての被控訴人に対する療養補償請求書を、右補償請求に係る被控訴人の事務を補助すべき職員が配置されている千葉県教育庁福利課に宛てて成東郵便局に差し出したことが認められ、右認定の事実によれば、控訴人の右請求書は昭和五八年三月三一日には被控訴人の補償請求事務担当者のもとに到着していると推認するのが相当であり、右到着の時点において被控訴人に対する療養補償請求がなされたということができる。そして、控訴人においては治療を受けた都度その治療代金を支払つていたことは前記認定のとおりであり、右支払の都度控訴人に対する療養補償請求権の行使が可能となり、療養補償請求権の消滅時効の起算点が右支払の時点であることも前記説示のとおりであるから、控訴人の被控訴人に対する療養補償請求権のうち、控訴人の前記請求書が被控訴人に到達した日から逆算して二年以上前の、昭和五四年七月一七日から昭和五六年三月三〇日までの部分は法六三条により時効によって消滅したことになる。」

以上のとおりであつて、控訴人の本件請求を棄却した原判決は相当で、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 中島一郎 加茂紀久男 片桐春一)

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